発言記録と表記法

発言記録と表記法

以前、カムワードにおける書き分けとして、共同通信社発行の『記者ハンドブック』(以下:記者ハン)について書きました。もちろん基本的な表記はそれに準拠して作成しているのですが、記者ハンは”記者が記事を書くときに用いる表記”として作成されたものです。

一方、私たちが行っている文字起こし・テープ起こしは、「発言記録である」ということです。仮に意味は同じであったとしても、発言者がどう言ったのか、どうしてもここのところを無視することはできないと思うんですよね。

速記者として議事録作成に携わっていた頃は、日本速記協会発行の『標準用字用例辞典』(以下:用字例)に基づいた表記で原稿を作成していました。当時は「今日」のことを「きょう」「今日(こんにち)」で使い分けていました。(現在は改訂され、統一されています。)さすがに、これはちょっとやりすぎな印象もありますし、実際当時は面倒だと思っていました。

その点、記者ハンは統一された語句も多く、分かりやすいのですが、発言記録としてこれでいいのだろうかと悩むこともあります。一方、用字例は細かい使い分けがたくさんあるし、一般的な表記から少し外れている印象もありますが、速記協会が編さんしていることから、「発言記録である」ということがしっかり中心に置かれているように思います。

記者ハン表記を基本にしつつも、この「発言記録である」という視点はしっかり残した原稿作成、これは忘れてはいけないと思います。